『ABRACADABRA』

2021.8.7-8.29
2kw gallery (滋賀) (Shiga)

鮫島 ゆい 天牛 美矢子

Photo by Ujin Matsuo
展覧会に寄せて 

「アブラカダブラ」は、誰もが一度は口ずさんだことのある御呪い(おまじない)だろう。 由来としてはアラム語やヘブライ語の呪術で使用されたりと諸説あるが、依然としてこのリズミカルな言葉の語源は明確ではないらしい。されども世界一有名な呪文は、唱えることで「不思議」を説明できるお手軽な言葉で、インスタントな神秘体験を私たちにもたらしてくれるまさに魔法の言葉である。 今回の「ABRACADABRA」は鮫島ゆいと天牛美矢子による展示である。鮫島は自身で作った立体をもとに、絵を描くプロセスを経ることで無意識の領域にコンタクトしようとし、天牛は自分の理解の範疇を超えたものに対し物語を想像し、布や革を使って表現することで近付こうとする。それぞれが制作の中で、ある種の「不思議」を利用している姿勢は、神秘に触れようと呪文を唱えている様でもある。 現代では「アブラカダブラ」の魔法は白日のもとに晒され、娯楽として消費されている。しかし本来護符に書かれ、祈りや呪いを込められたこの言葉は今でも人々を惹きつけ、現実からの浮遊を誘う。彼女たちが日々制作する中で作り出されるものは、どの様な魔法を見せるのだろうか。 アブラカダブラ。 
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