TWS-Emerging 194
『 pipe dream  』

2013.5.11-6.2
トーキョーワンダーサイト本郷 (東京)
Tokyo Wonder Site HONGO (Tokyo)​​​​​​
Photo by Ken Kato
個展 「pipe dream」に寄せて 
住吉 智恵 氏 (アートプロデューサー) 

若きシュルレアリストの誕生である。
オートマティズム的手法を応用し、感覚上で湧きおこるイメージと、理性的なアプローチでつくりあげたイメージとを脳内でコラージュし、1つの絵画世界を構成しようとこころみる。
作家はその手順を、中世の錬金術師の施す、怪しげな錬成の営みになぞらえる。
錬金術は、科学史に成果を残しながらも、神秘主義や魔術の隠れ蓑にも使われたといわれ、暗黒の中世に咲いた魅惑のあだ花ともいえよう。
卑金属を貴金属に変えるだけでなく、対立する物質同士を結合させ、果ては永遠の生命に至る「完全無欠なもの」を生成しようとしたとい うから、現代人からみれば壮大な妄想である。
一方でそこには神に代わって世界を完成させようとした、人間の探究心の究極があった。
鮫島がめざす到達点もまた、彼女自身の意識下に獏として存在する世界観の完成にある。
ホムンクルスという、すでに歴史的に朧げな輪郭のあるイメージを透かして見せるポーズをとりながら、独特の造形センスで、巧みに実体をわからせない。闇の中に置いてけぼりにされることは絵画の魅力の1つであり、謎めいたモチーフや画面構成に鑑賞者は心惹かれるのだ。
「モノクロームの夢を見る」(作家談)ように、グレイトーンの画面にちらりと入った挿し色が、本当に見たいものの手がかりとなるという色彩の実験も、巧くコントロールされたなら、よりシュッとした、洗練された絵画世界を精製できるはずだ。 


Back to Top